1999年の登場以来、東海道・山陽新幹線の主力としての地歩を築いてきた700系でしたが、最高速度は285km/hにとどまり、それ以前から300km/h運転を行っていたJR西日本の500系と比べて、所要時間の格差が生じていました。一方、その500系は、速度を追求したその構造故に客室が狭く、座席配置など他車両との足並みが揃わないことから、特に東海道区間では使い勝手の悪い存在となっていました。
2003年には新幹線品川駅が開業、「のぞみ」中心のダイヤとなりました。東海はさらなる輸送力の向上を、西日本は速度の向上を目指すにあたり、両者の要求を満たす新たな汎用タイプ車両開発の機運が高まりました。
こうして、700系の発展形であるN700系が、2007年7月改正と同時にデビューしました。この時点での運転本数は4往復(うち博多発着するものが3往復)でした。(このとき、定期列車では初めての品川始発となった「のぞみ99号」が登場。その7分後に続行する東京発「のぞみ1号」と、2本続けてN700系が走るダイヤとなりました。)

快走するN700系「のぞみ」
07.9.19 西明石〜姫路
N700系は、最高速度が500系と同等の300km/hとなりましたが、それだけでなく、加速性能の向上や、カーブを円滑に通過するための車体傾斜装置の導入などにより、最高270km/hに抑えられている東海道区間でも、時間の短縮が可能となりました。先頭の形状は700系と比べ、CGのポリゴン画像のような若干角張った面持ちとなっており、いかにもコンピュータシミュレーションの産物、という印象を受けます。

N700系の面構え
08.1.14 博多
私は08年1月に、N700系に乗車する機会を得ました。まだ「新車の香り」のする車両です。

1号車側面の様子
車体には大きく、「N700」のロゴが入っており、ひと目で判別できます。ただし車両番号を見ると、「N」のつかない700番台の数字が付されています。従って、「N」は対外的に従来の700系と区別するためのもので、内部的にはあくまでも700系の改良版という位置づけなのでしょう。
種別・行き先表示器には、フルカラーのLEDが採用されています。画面が大きくなり、停車駅なども表示されるので、まるで駅の案内板のようです。車内の客室出入り口上の表示器も大きく、くっきりとして見やすくなりました。また車両と車両の間には、隙間をすっぽり覆う幌が設けられています。凹凸をなくし、風切り音を軽減するためでしょう。このあたりにも「近未来の乗り物」という雰囲気があります。
N700系は、従来にも増して窓が小さくなり、まるで飛行機の窓のようです。0系と比べれば、1枚の面積は半分程度と思われます。窓際の席でなければ、外を見ることは難しくなりました。もっとも、高速で流れる車窓が目に入るとかえって疲れるので、むしろ小さい方がよいのかもしれません。(主な目的は、風切り音の軽減など、技術的な要素だと思いますが。)
車内はそつのない造りという印象。目を引くような奇抜さや豪華さはなく、まずは機能的といえますが、デッキの壁には落ち着いた配色のパネルを使うなど、目立たないながら要所は押さえている感じがします。なおこのN700系は、東海道・山陽新幹線では初めて全車禁煙となり、編成の4カ所に喫煙スペースが設けられています。嫌煙派の私にとっては実に有難いことですが、かつて自分の幼少時、新幹線の禁煙車など1,2両しかなかった時代のことを思うと、隔世の感があります。
さて、いよいよメインの「走り」に注目です。駅を出てからの加速は、これまで経験したことのないような鋭さで、まるで滑走路から飛び立とうかという飛行機のようです。一気にトップスピードに乗せ、その後はパワフルな走りでそのペースを維持します。小倉から広島まで、山陽区間で最も長い(最高300km/hのN700・500系は所要45分。700系だと47分)ノンストップ区間では本領発揮。妥協のない走りで突き進みます。
途中、減速を余儀なくされる徳山駅手前で、列車はスピードを落としてゆきますが、いかにも機械でコントロールされたような段階的な落とし方。(もっとも、私は意識しながら乗っていたのでそれを感じましたが、そうでなければ気が付かないことでしょう。)この自動制御の緻密さが、東海道の過密ダイヤにおいて威力を発揮するのでしょう。
N700系は静音性に注意が払われているとはいえ、窓側席だとやはり窓の風切りと、トンネルを出入りするときなどに車体の伸縮が感じられ、何となく気ぜわしい感じがします。落ち着いて乗っていたいのなら、むしろ通路側がよいのかもしれません。
このN700系、2007年度中に24編成が投入されることになっており、すでに07年秋以降、従来の500系運用を中心に、N700系への変更が進んでいます。08年1月時点で、N700系「のぞみ」は13往復(うち博多発着は9往復)にまで拡大。
08年3月改正で、東京〜博多間の「のぞみ」毎時1本がN700系となったほか、N700系使用の「ひかり」も新たに登場。またこの改正から、すべての「のぞみ」が品川・新横浜に停車するようになりました。車両性能向上に伴い、同等の所要時間を保ちつつ停車駅を増やすのは、最近の傾向です。これにより500系はほぼ「のぞみ」から撤退することになるとみられ、0系を置き換えて山陽「こだま」用となります。この「玉突き」で、長年山陽路を守ってきた0系は、ついに08年11月をもって全廃されました。

N700と0系、「顔合わせ」は1年半の間だけ・・
07.7.9 西明石
その後も徐々に「のぞみ」のN700系化が進められる一方で、700系の「ひかり」運用が増える傾向にあります。2011年度までには計96編成のN700系を投入し、定期「のぞみ」をすべてN700系化すると発表されています。すなわちこれが、700系の定期「のぞみ」からの撤退を意味することとなります。また、11年度までに東海の300系は全廃され、東海道区間は700系とN700系で占められることになります。新幹線の進歩向上の歩みは、まさにひとときも足を止めることがありません。
また2011年3月には、九州新幹線全通に伴い、山陽新幹線と九州新幹線を直通する「さくら」の運転が始まります。「さくら」用にはN700系をベースにした新車両(7000番台)が導入されて、新大阪〜鹿児島中央間が4時間程度で結ばれると発表されています。この車両は、九州区間の勾配にも対応し、内装は和風を基調とし、「レールスター」で採用されている4列指定席に加えてグリーン車(半室)も設けられます。これに伴い、現在の「レールスター」用700系は置き換えられて「こだま」用に転じるとされています。車両置き換えとともに、「ひかりレールスター」そのものが、「さくら」へと発展的解消を遂げるものと思われます。
N700系列の台頭は、新幹線の世代交代と再編成を一気に推し進めることになります。
→鉄道写真倉庫 N700系
記述は09年2月現在のものです。